無償による朗読公開について

著作者が存命中あるいは没後50年を越えていない作品、つまり著作権が切れていない作品の朗読ファイルを公開するにあたり、ここでこのサイトおよび関連サイトでの認識を示しておきたいと思います。

小説の朗読をネットで公開したときに、かなり悩みました。違法か合法か? ネット上を検索しても、著作者の生きている著作は、まったく公開されていなかったからです。ご存知のように文学作品の著作権は著者が亡くなってから50年、さらに翻訳物なら翻訳者が亡くなって50年経たないと、完全に自由とはなりません。著作権法も朗読のネット公開なんて触れられておりませんし、結局はかなりグレーな状態から音声の公開を始めていました。

しかし、現在の法律では合法ではないかという議論が渡辺知明さんの「Blog ことば・言葉・コトバ」を中心に巻き起こり、さらに「こがわ法律事務所Webnotes」で詳しく論破されました。しかしながらここまで論破される内容にも関わらず当の著作権情報センターでは「著作権者の許可がいる。無断使用は違法である」という旨の説明をしたという話です。

論破された内容は、朗読自体は法的にはテキストの音声版コピーではなく「口述という第二次著作物」となり、これの無償・無報酬による公共発信、送信(読み聞かせの会とか大勢の前での朗読)はお咎めがないというものです。自分のこどもによみ聴かせるのに、いちいち「許可がいる!」といわれたらたまったもんではないですよね。というわけで詳しくはリンク先をみて納得していただければと思います。

ただ、これは法律の抜け穴でしかないのかもしれません。本当はどうすればすべての人の利益になるのか、著作権法を時代にふさわしく整備する必要は十分にあることだと思います。

昨今ではポッドキャスティングが大流行していまして、やはりその中にも朗読があります。これで儲けようとしている企業などがあるようで、そちらからの不当な圧力で著作権の切れていない作品の朗読のネット公開はこの先できなくなるかもしれません。

以上、たびたび著作権の生きている朗読公開について「大丈夫なの!?」と周囲から心配されるので、もう一度、掘り返してみました。

各出版社の反応

上記の著作権解釈に至る前に、朗読の発表について出版社のご意見をお聞きしていましたので、掲載しておきます。

ポプラ社の反応

ポプラ社には、出版されていた書籍の「怪人二十面相」の朗読版を公開していることと、アドバイスや口述権に関する問題などがないかを問い合わせました。

すると、テキストに関して「出だしのみの公開であれば、引用なので問題ない」ということしか解答を頂けず、口述権や朗読に関してはノーコメントでした。これではままならないので、江戸川乱歩コーナーを設置している三重県名張市にメールで問い合わせた結果、遺族の方と連絡が取れました。同時掲載ファイル数3本程度という制限ながらも掲載の許可を頂くことが出来ました。

東京創元社の反応

東京創元社には、公開宣言文というものをお送りしましたが、反応がありませんでした。それで返事がなければ許可を頂いたこととして認識するという意向をお伝えしたところ、担当のKさんからお電話で連絡を受けました。

Kさんいわく、率直にいうなら、著作権の切れていない作品の朗読のネット公開は厳密には不可という見方をされていました。というのも、そういったことを許可する権限は、出版社にはないそうです。実際に許可を取る場合、国内作品であれば出版社を通して(あるいは連絡先を聞いて当事者が)、作者に許可を頂くこともできるそうです。これは、劇団が劇を上映するのに作者に許可をもらうことと、同じであるという視点です。

ですが問題は作者が外国人であったり、お亡くなりになっている場合です。このような場合、海外の窓口であるエージェント(芸能事務所のようなところ)にお願いして連絡をとってもらうという方法があるということです。日本のエージェントを通してでも可能だそうですが数万円の手数料が掛かるそうです(日本のエージェントでもこういうネット上での口述権の許可となると、新しい分野なので困るだろうと言っておられました)。当然、作者が亡くなっている場合は遺族の方と連絡をとることになります。

出版社的には、「権限がないんだから連絡しないでくれ」というのが本音だそうです。出版社というのは特別な契約をしていない限り、テキストをコピーして、ばら撒く(売る)という権利しかないので、朗読やその他の著作権的なことに関しては関わりたくないということです。

翻訳本の場合、翻訳者への連絡は容易だそうです。しかし、作者に連絡が取れなくてはやはり意味がありません。

これらのことについては、早川書房の方とも話をされたようですので、早川書房としても同じ意見のようです。

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